RESEARCH

最適設計とは、実世界の設計問題に対して

  • 設計変数 – 設計者が決めることのできる設計因子
  • 目的関数 – 最大化、あるいは最小化すべき設計対象の評価指標
  • 制約条件 – 設計対象が満たすべき条件

を数学的に定め、数理計画やメタヒューリスティクスなどを駆使して、最適(あるいは準最適)な設計解を導出する試みです。

設計変数の数が少ない、すなわち、設計自由度が小さい最適設計問題については、人間の勘や経験でも最適解やそれに準ずる解を得ることが可能ですが、設計自由度が大きくなると、勘や経験で最適解を得ることは極めて困難になります。例えば、上に示す3つのGIFアニメーションは、トポロジー最適化と呼ばれる構造最適設計法を用いて数十万の設計自由度を与えた上で、橋梁・放熱器・電解液流路の最適構造を探索する過程を示したものです。いずれのケースでも、生物の形態にも似た極めて複雑な最適構造が得られますが、これらを勘や経験から導き出すことは、多くの人にとって容易ではないでしょう。

グローバルな競争が常態化している今日、企業でのものづくりは最適であること、少なくとも最適を目指すことが求められており、人間の思考力の限界を超える最適設計は強力な武器となり得ます。これを踏まえ当研究室では、「最適設計」をキーワードに以下に示す様々な研究に取り組んでいます。

1. 集積デバイスの最適設計

パワー半導体デバイスや光半導体デバイス、MEMSなど、様々な集積デバイスの革新的な性能向上を目指し、これらを対象とした最適設計の研究に取り組みます。

図に示すのはパワー半導体デバイスを対象とした最適設計の一例です。この例では、半導体中の不純物のドーズ量を設計変数とし、トポロジー最適化により逆電流への耐圧性能の最大化を試みています。p-nダイオードを解探索の初期解として与え、トポロジー最適化により設計解を更新していくと、最終的にp-i-nダイオードが最適解として得られます。p-i-nダイオードがp-nダイオードより耐圧性能が優れていることは知られていますが、そのような知見を用いずに数学的な手続きのみで最適なp-i-nダイオードが得られたことは、最適設計の可能性を示すものです。

当研究室では、さらに高度で複雑な集積デバイスの設計問題に対して最適設計を応用する研究に取り組んでいきます。

2. 自動車の最適設計

自動車の電気系は複数の集積デバイスからなる典型的な集積システムの1つです。当研究室では、関連する機械部品をも含めた一個の自動車を広い意味での集積システムと捉え、革新的な性能向上を目指し、これを対象とした最適設計の研究に取り組みます。

より具体的には、図に示すような、自動車を構成する個々の機能部品を対象としたトポロジー最適化による構造最適設計の研究や、それら機能部品を組み合わせたサブシステムレベルでの最適設計の研究に取り組んでいきます。

3. 最適設計に関する基礎的方法論の開発

最適設計の研究課題は産業への応用だけに留まりません。最適設計の学術領域には、幾つかの本質的かつ解決困難な問題が存在します。その1つに、非線形性の強い最適設計問題における最適解の求解があります。

図中、左に示すのは非線形性の弱い最適設計問題、右に示すのは非線形性の強い最適設計問題のイメージです。非線形性が弱い場合には、設計変数に対する目的関数の感度情報に基づいて最適解探索が行えますが、非線形性が強い問題に対してはこのアプローチは成り立ちません。しかしながら、このような非線形性が強い問題にこそ、人間の思考力の限界を超える最適設計が求められています。

このような本質的かつ解決困難な課題に対して、当研究室では、感度情報を必要としない深層学習に基づく最適解探索法を提案するなど、従来の最適設計の枠組みを超えた視点から研究を進めていきます。

4. 生物に学ぶ新しい最適設計法の開発

冒頭に示した3つのGIFアニメーションでは、数学的な手続きから生物のような形態を備えた最適構造が得られました。我々は、これは単なる偶然ではなく、生物の形態は環境への適応を目的として長い年月を経て得られた、ある種の最適構造であると考えています。この仮説に基づき、生物の形態形成の原理をトポロジー最適化で解明する研究、および、生物の形態形成の仕組みにヒントを得た新しい最適設計法の研究を進めていきます。

早稲田大学 大学院情報生産システム研究科

集積システム最適化研究室

〒808-0135 福岡県北九州市若松区ひびきの2-7

Integrated System Optimization Lab.

Grad. School of Information, Production and Systems, Waseda University

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